パイプ
パイプが詰まった。テネリフェの水は、カルキがたくさん入っている。洗濯機の水が、台所のシンクに入り込み、その水は排水されずに、洗濯機に戻ってゆく。
パイプマンはなかなかこない。昨日の朝10時に来ると言って、道をまちがえ、その後、何度か連絡をしたが、いつこれるかわからないと、電話でわめく。わめいているのではないかもしれないが、スペイン語はわめいているように聞こえる。
結局こなかった。洗濯はできない。食器洗いは、廃水をバケツにためて、トイレに流して行う。
そういえばマリオは配管工だったと、昨日息子に気づかされた。
マリオはまだこない。
早く来ておくれ。
愛しの配管工よ。
マリオよ、あなたが家に来てくれるのを、今か今かと待ちわびている。
1分と言う時間が、1時間のように感じられる。
あなたのことを考えずに、一瞬も過ごすことはできない。
愛しい人よ。
早く来て、パイプを直し、私のこの病んだ心も、直しておくれ。
汚れた衣服の山の前に、私は只々圧倒され、力なく跪いている。
そんな私を、この呪われた洗濯物の山から、手を取って救い出しておくれ。
あなたは火を逃れ、カメさんたちの攻撃をかわし、恐竜のヨシに乗って、たくましく戦う戦士だ。空を飛び、時には火の海に落ちるが、何度も蘇り、決してあきらめない。お金もたくさん持っている。ブロックをちょっとつつき、飛び出してきたコインをすかさず頂戴するその身の軽さよ。
愛しのマリオ、私にかけられた呪いを解いておくれ。